(1)管理組合運営の悩みと問題は
国土交通省の「平成15年度マンション総合調査」によると、「管理組合運営における将来への不安」の第1位は「区分所有者の高齢化」、第2位は「賃貸住戸の増加」です。 築年数が経過するにしたがい、建物・設備の老朽化と、居住者の高齢化が進むことは避けられません。初めのころは、傷んだ箇所を補修するだけですんだ大規模修繕工事でも、設備の更新や新規導入といったグレードアップ工事が重要になります。また、賃貸住戸もだんだん多くなるため、居住者間のマナーをめぐるトラブルもおきやすくなります。 こうしたことから、管理組合役員のなり手が少なくなり、とくに管理組合の多くを占める小規模マンションでは、一部の区分所有者に大きな負担がかかることになります。こうしたことが複合的に作用して、理事会の機能が低下し、老朽化などがさらに進むことを心配する管理組合が、今後増えることが予想されます。
(2)管理はいったい誰がするのか?
マンションの共用部分や敷地は、区分共有者の共有財産ですから、維持管理は区分所有者全員で行うのが、本来の姿です。しかし、全員で日常的な管理を行うことは、実際は無理ですから、「区分所有法」は区分所有者が管理者を選び、管理を委任することができることを定めています。 管理者には、区分所有者だけでなく誰でもなることができ、管理に詳しい専門家や管理会社を、自分のマンションの管理者として、選ぶことも可能です。 「標準管理規約」では、区分所有者が主体的に管理をするという考え方にもとづいて、現に居住する区分所有者の中から管理組合理事長を選び、管理者とする仕組みをとっていますが、区分所有者の高齢化などにより、組合運営が難しいような場合には、区分所有法にもとづいて第3者を管理者とし、理事長と同じ役割を委ねることもできるわけです。
(3)「信託方式」と「新管理者管理方式」
「信託」というのは、自分(委託者)の信頼できる人(受託者)に財産権を引き渡し、一定の目的(信託目的)にしたがい、ある人(受益者)のために、受託者がその財産(信託財産)を管理・処分する制度です。「信託業法」の改正で、これまで銀行だけに認められてきた信託業務を、一般の企業も営むことができるようになり、区分所有者の総意で区分所有権や敷地利用権を、管理会社に信託することも可能になりました。 「新管理者管理方式」は、区分所有者だけでは運営が難しい管理組合から、管理者になることを求められた管理会社が、信託の考え方を取り入れた厳格な基準のもとで仕事をするために、高層住宅管理業協会が提起した方策です。 どちらの方式も、区分所有者の大切な財産の管理運営に任せるだけに、これまで以上に企業の信用度、実務力、業務の透明性が重視されることになります。
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