不動産ジャーナリスト 大越事務所
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「高齢化社会と元気マンション」(2006.10)

 

(1)高齢化社会が進んでいる

わが国の総人口は2005年10月1日現在、1億2,776万人で、前年の1億2,778万人比べて2万人減少しました。いよいよ人口減少時代が、現実のものとなったわけです。出生率も減少を続け、一人の女性が生涯に出産する子供の数(合計特殊出生率)は、1.28人にまで低下しました。 高齢者だけは増加します。65歳以上の高齢者人口は過去最高の2,560万人になり、全人口に占める割合も、初めて20%を超えました。これから高齢者は2020年頃まで急速に増加し、その後はおおむね安定しますが、総人口が減少するため高齢化の割合は上昇を続け、2015年には26.0%、2050年には35.7%になると予想されています。 マンションが多い大都市圏の高齢化率は、地方に比べて低いものの、やはり加速し、高齢者の割合が最も低い埼玉県でも、04年の15.5%から25年には27.8%になります。ちなみに、将来の高齢化率が最も低いと思われるのは沖縄県で、04年は16%ですが、25年になっても24.0%にとどまると予想されています。

(2)介護保険を上手に活用して健康に暮らそう

介護保険法が改正され、2006年4月から施行されました。その最も大きなポイントは、予防重視型システムの確立を目指したことです。これは介護が必要という認定を受けている人の半数が、「要支援」や「要介護1」という軽い段階にあることを考慮したものです。 介護保険の基本理念は「自立支援」ですから、これを徹底するためにも、できるだけ「要支援」や「要介護」の状態にならないように、運動機能の向上、閉じこもりや認知症の予防などを、地域全体で行うことになりました。 具体的には、市町村に設ける「地域包括支援センター」で、①利用者の状態に応じた目標を設定、②本人を含め様々な専門家が協力して、利用者の自立に役立つサービスプランを作成、③サービス利用の効果などを定期的にチェックします。 こうした仕組みを上手に活用することで、介護を必要としない健康な生活を続けるようにしたいものです。

(3)厳しい財政事情、自己負担が増加する

2000年4月に介護保険制度がスタートときには、介護保険サービスの利用者は149万人でしたが、05年4月には329万人と、180万人も増えました。費用も2000年度には3.6兆円でしたが、05年度予算で6.8兆円、06年度予算では7.1兆円にまで増加しました。 これから高齢者が急速に増えるとともに、介護保険にかかる費用も増大します。従来の制度のままでは、保険料が大幅に高くなるなど、制度そのものを維持することが難しくなる可能性もありました。 このため今回の制度改正で、特別養護老人ホームなどの施設に入所している人や、ショートステイを利用している人に、住居費と食費を負担してもらうことになりました。同じ要介護状態でも、自宅で生活をしている人は、施設に入所している人よりも、実質的に2倍以上の負担をしているからです。住みなれた地域で、元気に生活を続けることが、介護保険にかかる総費用を抑えることになるわけです。

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高齢化したマンションで、今、何が起こっているか

 

 高齢者がだれにも看取られずに死亡している「孤独死」が、大都市のマンションや公営住宅などで相次いでいます。誠に痛ましい問題で、こうした現状の実態を、具体的に紹介しましょう。 首都圏の駅前にあるマンションで、一人暮らしのお年寄りが亡くなっているのが、発見されました。発見のきっかけは、人口透析に通っている病院から、「3日間来院しないが…」との問い合わせが管理室にあったことでした。 このマンションは、築5年ですが、駅前であるうえ1階にスーパーマーケットが出店しているため、分譲当時から高齢者にも人気がありました。これからも、同じようなことが起きる心配があるため、管理組合では高齢の一人暮らしの居住者について、日頃から安否確認をする方法がないか、検討しはじめています。  死後3日間、だれも気が付かなかったというだけでも哀しい話ですが、実はもっと悲惨なケースもあります。東京・下町のマンションでは、隣の住戸から異臭がするとの通報を受けた警察が調べたところ、無職の独身男性が病死しているのが発見されました。死後1ヵ月でした。 新聞も取らず、管理費も自動振り替えで納めているため、発見が遅れたということです。親族はいますが、相続放棄をしたため家具などを引き取らず、警察の説得で荼毘(だび)には臥したものの、その他は一切関知しないということで、管理組合でも大変困ったということです。  東京都監察医務院は、都内で不自然死した遺体の検案や解剖をしています。同院の発表では、2004年に扱った65歳以上の1人暮らしの不自然死は2191件で、前年よりも約230件増えています。このうち自宅で死亡したのは、1,669件で76.2%。 発見者は、家人635件(38.0%)、管理人273件(16.4%)、保健・福祉232件(13.9%)です。住宅の種類は不明ですが、マンションもかなり含まれているはずです。  分譲マンションの居住者が1,200万人を超え、全人口の1割を占めるようになりました。マンションの多い大都市圏では、この割合はずっと大きくなっています。高齢者の一人暮らしも当然急増することになり、冒頭に紹介したような例が、あちらこちらのマンションで起きる可能性があります。 「孤独死」といった悲劇に至らないまでも、認知症による徘徊などが問題になっているケースは、各所であります。築20年以上たったマンションでは、管理組合の役員をなんども経験した人が、エレベーターのなかでオシッコをするようになり、困っています。 このマンションの場合は、若い区分所有者も比較的多いため、管理組合運営に支障はありませんが、なかには近い将来、地方の集落と同じように、大多数が高齢者というマンションも出てくでしょう。 建物・設備の老朽化と、区分所有者・居住者の高齢化という二つの大きな問題に、どう対処するのか、当事者である管理組合、管理会社はもちろん、国や地方の行政にも、しっかりと考えてほしいところです。

 

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