定年後、人生の第3ステージともいうべき熟年時代を、いかに有意義に、楽しく暮らしていくかが、大きな社会的テーマにもなっている。還暦を超したばかりの筆者自身も、そうした取材をしながら、いい暮らし方がないものかと、いつも自分自身の問題として、思い巡らしている。?
それには気分一新、思いっきり居住地を変えることが、新しいライフスタイルを生み出す楽しみがあるということで、子ども時代に戻って、遠い田舎に暮らしてみるか。いや、長く住み慣れた都会生活は、生活の拠点でもあって捨てがたい魅力があり、都会と近郊の2地域居住を模索した方がよいのでは――――ということで、ここ1、2年、「遠い田舎暮らしか、それとも、首都近郊での2地域居住か」を、自分なりに追ってみたので、雑ぱくではあるがリポートしてみよう。
夕日を見下ろす「長崎の丘」に住む
新宿御苑前の「閻魔大王像」と「奪衣ババア像」で有名な太宗寺の門前にあった、大きな目玉をした達磨大提灯が目印の小さな料理屋「だるま」の旦那夫婦が、還暦を目前にして店を畳んでおかみの故郷・長崎に戻った。「夕日を見下ろす長崎の丘に住みたいな」というので、郊外の分譲中のニュータウンを案内した。
そこは、長崎市中心部からわずか10数キロメートルの立地。長崎の街を楽しみながら、海と山の幸を満喫できるロケーション、というのがうたい文句だ。東京暮らしをしていた都会人には、分譲価格も値ごろで、「永住の地」にするには申し分ないところ。
それだけに、現地には「だるま」旦那夫婦のような2人だけの年配夫婦が、東京や大阪から供給業者の呼びかけに応じて「田舎暮らしの体験下見ツアー」として、結構参加していた。名古屋から移住してきたご夫婦など、すでに10数家族が快適な長崎田舎・都市生活を送っており、ジョギングを楽しんでいる姿も多く見られ、長崎らしい田舎暮らしの”ぜいたくさ“を感じた。市内までは、コミュニティーバスが運行されており、通勤、通学、観光、買い物に不自由はない。ある意味では、ここは「都市型田舎暮らし」の典型で、都会人には定年後のセカンドライフとして、都会と田舎の両方とも捨てがたい人には、もってこいか。
デベロッパーも、そこは心得ていて、「田舎暮らしの不安」に対し、貸し農園の話とか、仕事の斡旋状況、自治体誘致の優遇策、移住事例の数々など、カユイところに手の届くほどの説明をしていたのは、さすがであった。
「沖縄生活」へ、本土からの移住者急増!
沖縄にも行ってみた。「田舎に帰ろう」のUターン、Jターン、Iターンが、このところ増えているが、なんといっても一番増えているのが、沖縄への移住者だろう。
「定年後、どこに住みたいか」という意識調査をすると、団塊世代を中心とした大方の人は、「沖縄」を移住希望先のトップにあげており、ついで「首都圏」や「中部圏」「都心近郊」などで、その理由は「自然が豊か」としている。
沖縄大京が、2000年から昨年の06年まで販売した大京ライオンズマンション(28棟、1,158戸)の「購入者分析調査」をした結果、03年と05年の沖縄県外からのマンション購入者(原則、本人居住でセカンドハウスを含む)が、2人に1人の50%を超え、とくに05年の県外購入者は、過去最高の53.8%にも達していたことが、判明した。また、昨年も引き続き県外からの購入者が増えており、その比率は45.1%に達している。
これを[表]にしたのが、下記の表で、2000年当時は20.8%で、5人に1人の割合とそれほどでもなかったが、01年、02年と30%に上昇、急に増えだしたのは、03年からで過半数を超え、沖縄大京の担当者は「インターネットの普及につれ、確かに東京や大阪など本土の大都市からの移住者が、増えてきていますよ」と、いっている。
現地で移住者向けの情報誌『こだわりの沖縄生活』を発行している編集者は、「リゾート感や観光地だけの沖縄と思って、沖縄生活を送るのでは飽きて、続かないと思うので、等身大の沖縄生活の楽しみ方、移住者の紹介コーナーなどを毎回盛り込んで企画している」という。
女房も折れた千葉「鴨川」での2人暮らし
千葉は房総の先端「鴨川」の山中に、大学時代の友人が昨年、セカンドハウスを建てたので、この夏一泊し、定年後の夫婦2人の田舎暮らしの実際を、夜通しじっくり聞いてきた。400坪の傾斜地を買い、商社マンをやめて年金・農園生活と好きな海釣りの日々、小遣い稼ぎの仕事もメールで中国とし、筆者にも読めない商業英文ばかり。
小金井の自宅は子どもに譲ったが、なぜか住民票は移していない。奥さんも田舎暮らしに慣れたが、月1回は東京にお稽古事に通っている。彼も「望んだ通りで、女房も折り合ってくれたし、不満は全くない」という。これぞ、首都近郊での理想的な2地域居住か。
沖縄における大京・ライオンズマンションの供給戸数と沖縄県外からのライオンズマンションの購入者
項目 |
供給戸数(戸) |
県外からの購入者(名) |
割合(%) |
2000年 |
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01年 |
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02年 |
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03年 |
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04年 |
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05年 |
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06年 |
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