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マンション経営の天国と地獄④
「いつも空腹のフロー型経営と安定収入のストック型経営」

常に不安定なマンション分譲事業

 マンション事業は、フロー型ビジネスの典型的な業種である。土地の仕入れから建築、販売までの“資金回転”で成り立っているのだ。安定した売上げは約束されておらず、次から次へと契約していってはじめて売上高が決まってくる。
 毎年がこの積み重ねで、決算が終われば次の期初からは、お腹ペコペコのゼロからのスタート。この繰り返しであり、いつも空腹状態のゼネコン業界とも似てはいる。
 マンション事業には、景気の良い時でも悪い時でも、真っ先にその波をかぶってしまうという不安定感が付きまとっている。事実、マンション分譲を専業としていた新興デベは、1990年代のバブル崩壊時と、2年前のリーマンショックによるファンドバブル崩壊時の2度にわたる大津波により、実質的にほとんどが潰れてしまった。景気がピークとなり、一番儲かる時には地価も上昇して建築費も高騰するため、景気が悪化すると、一挙に重量オーバーとなり、船が傾き、ひっくり返ってしまうのである。

景気に左右されないストックビジネス

 一方、安定的なストック重視の堅実経営をしてきたデベは、わずかではあるが、何とか持ちこたえた。それは同じ不動産業の中でも、ストック型ビジネスの典型である賃貸ビルや賃貸マンションの、管理・運営事業に、フローの利益の中から少しずつ投下してきた成果である。
 個人オーナー型新興デベの経営者は、常にフロービジネスの“不安定感”から、投下資本を少しでも安定的なストックビジネスに振り向けたい衝動に駆られる。しかし、よく考えてみると、現在の旧財閥系大手デベとて、元をただせば新興デベと同じで、創業期は必死に稼ぎまくって、その後、稼いだ利益を土地やビル、株の資産に換えて安定収入とし、今日の盤石な経営を築き上げてきたのである。
 つまりは、フロービジネスのマンション経営を永続化させていくためには、フローの利益の中から、景気に左右されない安定収入のストックビジネスに投下し、両方の利益を同時に追い求めていく、というバランスのとれた両輪経営をめざしていく必要があろう。

出典:月刊不動産流通2010.12

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