マンション経営の天国と地獄①
「マンション需要が半減し、新興デベが市場から退場」
生き残ったマンションデベは、10社強
都市・都会の住宅として、すっかり定着したマンション。都心3区では、すでに戸建て住宅を上回って供給され、地方の中核都市や県庁所在地でも、駅前や中心部にニョキニョキと建っている。
しかし、供給する立場のマンションディベロッパー業界をのぞいてみると、そこは一転、惨たんたる冬の荒野の風景となる。マンション業者はこの2~3年の間に、かなり倒産が続き、その数を半減させるという異常な淘汰の状況下にある。
その原因はいうまでもなく、2007年8月の「サブプライムローン問題」を発端とした08年9月の「リーマンショック」、それに伴う世界同時不況の金融危機だ。それが、歴史が浅く、体力のあまりない日本のマンション業界を直撃したのだ。
今、健全な体質で生き残っているマンション業者は、旧大手財閥系を中心に、銀行系・鉄道系、それにわずかな専業グループの合わせて10社強に過ぎない。社長が経営を牽引するような個人オーナー型の新興のマンション専業ディベロッパーは、資金調達が困難となり、規模の小さな会社がわずかに生き残っている程度。それほど浮き沈みの激しい業界なのである。
業界地図を刷新?大京―穴吹の提携
もう一つの要因は、需要サイドの動きが激しく連動したため、首都圏のマンション市場がそれまでの年間「8万戸市場」から、「4万戸市場」に急半減してしまったことだ。この急激な市場の喪失が、個人オーナー型新興ディベロッパーの経営を行き詰まらせ、30社近くが市場から退場してしまったのだ。
なかでも09年11月に事実上倒産した㈱穴吹工務店は、全国マンション供給ランキングでも常時ベスト3に入る大手マンションディベロッパーで、3年前の07年には年間5037戸を供給し、念願の業界トップの座を初めて射止めていた。しかし、それもつかの間、天国から地獄に転落してしまったことになる。
今後は、専業最大手の㈱大京の傘下に入って、再建浮上をめざすという。大京と穴吹工務店の提携は、今後の業界地図を大きく塗り替えていく要素を含んでおり、注視する必要がある。
出典:月刊不動産流通2010.09
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