【巻頭言】自分たちが住んでいる町の「ハザードマップ」を見て、覚えておこう!
この夏封切られ全国公開中の話題のアニメ映画「天気の子」(新海誠監督)を見たら、テーマはなんと異常気象による集中豪雨に襲われる東京の姿だった。現代の巫女の「晴れ女」の少女が祈るだけの超能力で、瞬時に晴れ間をつくってくれるのだが、それも終盤には力尽き、豪雨は止むことなく3年間も降り続く。ついに東京の荒川・江戸川下流域の下町全体が大洪水に見舞われ、水没してしまい、ジ・エンド。
ナレーションは平然と言う。「東京は、もともと半分は海だった」「世界の気象が狂っている」―――。
このアニメの現実が来なければよいが、最近の全国各地での異常な集中豪雨、洪水、土砂災害の現実を目の当たりにしていると、来ないという保証はない。いつ、利根川水系の氾濫が埼玉、千葉あたりからくるかわからないし、荒川にしたって、赤羽の水門がいつあふれ出し、決壊しないかどうか、素人目ではあるが、不安になってくる。
こうした不安に対して、昨年8月、江戸川区だけでなく江東5区がまとまって、大規模水害が発生した場合、区外への広域避難計画を策定した。今年の5月には、江戸川区が「水害(洪水・高潮)ハザードマップ」を策定し、江戸川区のマップの上に「ここにいてはダメです」「江東5区のほとんどが水没します」と、全世帯に呼びかけ配布したそうで、これまでの防災常識を超えたものとして正直、驚いた。ここまで行政も危機感を持って、全住民に正直に呼びかけるようになったのか、と。何よりも命を守るための行動の大切さを、的確な「ハザードマップ」をつくり、全住民に訴えたのは画期的なことと思う。
大規模災害を想定し、日頃から警戒を怠らず、自分の住んでいる町やエリアの被害予測を地図にした「ハザードマップ」を知っておくことは、もはや必須事項だろう。
本誌「MALCAの眼」の今号では、前号の特集「2018年、自然災害によるマンション被害と対策」に続き、こうした江戸川区のハザードマップの動き等をさらに深掘りし、台風・豪雨・洪水・土砂災害による広範な自然災害に対する「マンション防災をめぐる新情勢」の動きとして、意欲的な特集を組みました。
(ここまでの記事は、9月末締め切りで送稿し
た文章ですが、10月12~13日にかけての台風19号による記録的な大雨の被害が甚大でしたので、最終ゲラ段階で急きょ、一言触れておきます。)
それにしても、東日本の広範囲に多くに河川が同時氾濫し、堤防決壊が59河川90カ所(10月17日現在)にも広がっていたのは、おそらく初めてのこと。地球温暖化を食い止める対策が全く進んでいないので、これからもこの異常気象が毎年繰り返されてくることでしょう。せめてハザードマップを見て、これに備えるしかないのだろうか。
(2019.11掲載)
掲載機関誌「MALCAの眼」第6号 2019/11/28
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