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タワーマンション課税と長周期地震動

タワマン課税、上層階は「増税」し、下層階は「減税」に

新築のタワーマンション(通称タワマン)にかかる固定資産税・都市計画税と不動産取得税が、今年(2017年)の4月から見直されることになった。これは、「上層階ほど増税、下層階ほど減税、中層階は据え置き」というもので、毎年の固定資産税ばかりか、その後の相続税にまで課税が強化される見込みとなっている。これからタワマンを購入、あるいは投資をしようとしている人には、よくよくチェックしておくべき事項であろう。

「長周期地震動」など、
タワマンをめぐる環境に大きな変化が

しかし、ここへきてタワマンをめぐる環境は、今回の課税見直しを横目に、大きく変わろうとしている。その最大の理由は、いかに堅固・不燃の眺望の良いタワマンといえども、震度6以上の大規模地震動に対しては、ひび割れ・亀裂等のさまざまな被害が発生するという防災上の問題。特に最近、問題になってきた。
「タワマンでの長周期地震動」は、巨大地震時に発生する“船が大きく揺れる”ような、長周期でゆっくり大きく揺れるため、特に高くなればなるほどタワマンに及ぼす影響が大きく、被害がひどくなることから注目されだしてきた。

地震に強いとされてきたタワマンでも、長周期地震動に対する対策はまったく手薄で、エレベーターが停止したり、火災が発生すると、非常階段などの避難経路に居住者が一斉に集中し、大混乱のパニック状況が予想される。これがため、最近では、富裕層の人でもリスクを考えてタワマンを求める人ばかりではなくなっており、エレベーターに依存することもない下層階に移り住む人も出てきている。そうした意味でも、今回の小役人らしいチマチマした税制改革によるタワマン課税の導入とは裏腹に、タワマンにおける「長周期地震動の対策」という新たな課題に直面していること考えると、住宅・土地の税制改革がいつも常態的に後追い課税になっているとはいえ、いかにも皮肉なことではある。

参考写真

参考写真

従来の最上階と1階との「販売価格の差」は、
2倍の開きも

タワマンとは、高さが60mを超える建築物(建築基準法令上の「超高層建築物」)で、各階平均3mとして約20階以上の居住用の建物を指す。新築タワマンの取引価格は、眺望の良い上層階にいけばいくほど高くなっており、最下層階と最上層階との販売価格を比べてみると、2倍ほどの開きがある。しかし、現在の固定資産税は、同じマンションの同じ広さの床面積であれば、1階でも最上階でも同額になっている。それを昨年末の税制改革で、物件取引価格の資産価値に応じて、固定資産税も変えることにした。
具体的には、中間の階の固定資産税額は、現状のままの据え置きとし、そこから階数が1階ずつ上がるごとに、約0.26%ずつ税額が上がるようにする。逆に中間階から1階ずつ下がるごとに、税額は約0.26%ずつ下がっていく。例えば、40階建てのタワマンの場合、固定資産税が年間20万円とすると、最上階の40階は約21万円となり、1階の約19万円と比べると、10%ほど税額が高くなり、現在の税額よりも5%の増税となる。また、他の部屋よりも天井の高さや、付帯設備が著しく充実している豪華な上層階の部屋などは、別途その差異に応じて税額を上乗せすることもある、としている。

同じマンション内なら、税額はわずか10%ほどの差

これにより、「上層階に行くほど高値で売買されているのに、固定資産額は階数に関係なく同額だから、高層階の人が得をしている」という矛盾点は、一応解消される。しかし、タワマン1棟の合計の税額は、結局は現行と同じなので、同じマンション内で、わずか10%ほどの差くらいでは、富裕層の人にとっては大した影響はなく、タワマンの資産価値も大きく揺らぐことはないものと思われる。

この新税制が適用されるのは、2017年4月以降に販売されるタワマンとなり、固定資産税・都市計画税は、2018年度から実施される。つまり、17年3月末までに売買契約をしておけば適用されない。

タワマンにも、「長周期地震動の恐怖」が現実に

タワマンは、全国で1,500棟、40万戸を超えるほどに増え続け、東京湾岸のウオーターフロントエリアでは一大景観をなして、東京湾の観光名所にもなっている。これが地方の中核都市にも普及し始めているばかりか、最近は、地方の県庁所在地の都市に行っても、けっこう見られるようになってきている。特に高層階は、市場価格が高い割には税金が安いことから、富裕層の人からは投資として、また相続税の節税対策としても人気を呼んできた。

しかし、6年前の東日本大震災の巨大地震時に、長周期地震動が発生し、東京・新宿の超高層ビルでは最大1.08mの大きな長い揺れを観測しており、さらに遠くの大阪の超高層ビルまでも、長周期地震動の揺れの動きで、エレベーターが止まってしまい、中に人が閉じ込められたり、内装材が破損するという被害が出たことで、「長周期地震動の恐怖」が広く、徐々に知れ渡るようになっていった。

複合タワマンでは、住宅棟を揺れない
下層階に配置換え

これを契機として、都内のオフィスとの複合タワマンの建築において、すぐさま長周期地震動の新たな対応策をとるところが出てきた。それ以前の複合タワマンでは、下層部・中層部までをオフィス階層とし、上層部を眺望の良い住宅レジデンス棟としていた。ところが、長周期地震動では、下層階がまったく揺れずに、上層階が大きく長く揺れるという特徴から、上層階が住まいでは揺れが大きく、とても住ませるわけにはいかないものと判断し、従来の複合タワマンの配置の仕方をくつがえして、下層部・中層部までを住宅レジデンス棟として売り出した。オフィス棟は、眺めの良い上層部配置されるという、新しい形の複合タワマンがお目見えしたのである。都心部のタワマンの住宅には、高額なこともあってか、特に安全・安心な住み心地の良いものが求められているからでもあろう。

超高層オフィスビルでも、
経営トップの執務室が下層階に移動

東日本大震災以降は、同時に超高層のオフィスビルにも大きな変化をもたらしている。都心部のビジネス街は、ほとんどが超高層の大型ビルに衣替えされてきているが、そこで働く経営トップの考え方も、行動様式にも大きな変化が出てきた。
長周期地震動の影響で、いかに免振・制振の最先端BCP(事業継続計画)防災ビルとなっていても、経営トップの人たちの執務室(社長室、役員室等)が、それまでの最上階から、2〜3階の下層階に下りてきている現象が目立つようになってきた。最上階に経営のトップがいては、巨大地震に襲われたときには、エレベーターが止まったりして、経営トップとして緊急対策や緊急支持に大きな支障をきたそう。また、旧耐震のオフィスビルが嫌われて、移転する会社が続々出ているのも当然であろう。

政府も、長周期地震動対策に乗り出す

こうした長周期地震動に対する対策としては、超高層のオフィスビルでは、ここへきて、最先端の技術で武装されたBCPビルが続々と出現しており、必要に応じた補強策がとられようとしているが、タワマンの方の対策としては、すべてがこれからである。しかし、行政の動きはというと、それまで専門家の間で検討されてきたものが、ようやく2年前から表面化し、長周期地震動対策が本格的に動き出そうとしている。

すなわち、2015年12月に、内閣府が、「南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する報告」を発表し、長周期地震動の怖さに対する警告を発した。これを受けて、国交省でもすぐさま検討に動き出し、昨年の6月24日に、「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について」を取りまとめ、同日、地方公共団体等の関係団体に通達を出した。こうした行政側の対策の動向等については、前項の飯田太郎氏(MALCA 編集委員)の「長周期地震動対策と国の動向」と題する解説に、これまでの経過・経緯と現状・今後の内容が具体的に詳しく網羅されておりますので、重複を避けて、ペンを置く。

参考写真

掲載:機関誌「MALCAの眼」第2号 2017/4/25
掲載:機関誌「MALCAの眼」第2号 2017/4/25
掲載:機関誌「MALCAの眼」第2号 2017/4/25
掲載:機関誌「MALCAの眼」第2号 2017/4/25

掲載:機関誌「MALCAの眼」第2号 2017/4/25

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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